かたくりかたこりかたつむり

やっぱり誤字脱字は氷山の一角

DBH考察用履修リスト(2/2)

以下の記事の続きです。

katakurikatakori.hatenablog.com


考察用に読んだ本や見た映画など。自分用なのでおすすめリストではない、「再読」「読みかけ」などのメモあり、私が分かってることに関する本はない、主義の偏りオールオッケー。作中のノリにはむしろ反発する立場。


心理学

偏見や差別はなぜ起こる?: 心理メカニズムの解明と現象の分析

多岐にわたる偏見・差別のメカニズムの解説と、実際に起きている現象の分析。執筆陣は第一線の研究者だが、アカデミック寄りではなく一般書や大学生向けのテイストのため読みやすい。おすすめ。

心理学の中で偏見・差別を扱うのは主に社会心理学で、時代とともにその主要な理論も移り変わってきた。しかしそれらに共通しているのは、人間として適切な心のありかたの副作用として偏見・差別が生まれるということ。単なる思いやりや優しい心ではなかなか解決できない理由がここにある。

反共感論
反共感論―社会はいかに判断を誤るか

反共感論―社会はいかに判断を誤るか

共感推しが吹き荒れる現代において、逆張りもいいところに見える「反」共感の主張。果たして共感とは、倫理の根拠にふさわしい感情なのだろうか? 一見いい事づくめに見える共感のダークサイドとは?

社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学

「まず直観、それから戦略的な思考」が著者の基本スタンス。私たちはとっさの反応から浮かんだ感情に、後から理屈をこじつけているのだ。著者独自の「道徳基盤理論」によって、それぞれの「正義」が異なる理由、特にアメリカの保守とリベラルが分かり合えない現状を分析する。『モラル・トライブズ』と合わせて読むとなおよし。

なお邦訳はミスリード。原題は"The Righteous Mind(正義心)"。

服従の心理
服従の心理 (河出文庫)

服従の心理 (河出文庫)

ユダヤアメリカ人の社会心理学者・ミルグラムによる、かの有名な「服従実験(アイヒマン実験)」の報告。良心的だと自負している人物でも、ひとたび権威に命じられれば、激しいストレス反応を見せながらも残酷な行動を取ってしまう。それは人間の根源的な性質のひとつなのだ。

夜と霧(新版)
夜と霧 新版

夜と霧 新版

再読。ナチス強制収容所を生き抜いた、ユダヤ人の精神科医フランクルによる精神科医としての分析。フランクルは収容される前から「実存分析」を唱えており、これは生きる意味を充実させることで精神の病を治すというものだった。絶望によって囚人たちが死んでゆくなか、収容所から生還することで、図らずもそれを自分自身で証明してしまったのだ。

戦争における「人殺し」の心理学

再読。元軍人の心理学者による、殺人を可能にするメソッドについて。そもそも人間にとって殺人は大変な心理的負担。よってそれを可能にするためには、敵を非人間化し共感を断つ訓練が必要になる。

自由からの逃走
自由からの逃走 新版

自由からの逃走 新版

再読。著者は、ナチスの迫害を逃れてアメリカに渡った、ユダヤ系ドイツ人の社会心理学者・フロム。第一次大戦での敗戦を経て、当時のドイツ国民に「権威主義的パーソナリティ」という性格が形成されていたとし、そこからどのように人々がファシズムを支持するに至ったのかを考察する。

社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>
社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)

社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)

  • 作者:小坂井 敏晶
  • 発売日: 2013/07/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

フランスで教鞭を執る著者による、一般的なものとは趣の異なる社会心理学論。心理学の派生元である哲学を豊富に交え、日常意識されない社会の仕組みを説く。なお自由意志は完全に存在しない立場なので、そこは多少差し引いて考えるといいかも。

MBTIへのいざない―ユングの「タイプ論」の日常への応用

DBHの思想の根本が理解できなさすぎて、いっそパーソナリティ分析に走った。完全に私だけ必要なやつ。MBTI自体は、賛否あるものの自己分析には有用。

脳科学

脳に刻まれたモラルの起源-人はなぜ善を求めるのか

私たちが考える道徳とは、客観的な理性に基づくものではなく、進化によって身に着けた生得的なもの。従来、哲学や宗教が扱ってきた道徳というものが、現代では脳科学進化心理学の扱う分野になってきている。脳科学から考えるモラルとは?

あなたの知らない脳 意識は傍観者である

「私」が意識している部分は、脳の処理のほんの一部分、氷山の一角に過ぎない。私たちの行動をコントロールしているのは「私」なのか? 「意識」の裏で働く脳のメカニズムから、責任問題にまで話を展開させる。

「地球が宇宙の中心から転落したことは、多くの人々に深い不安を引き起こした。…中心から転落してわずか400年後、私たちは自分自身の中心からも転落したのだ。…これだけ権威を失墜したあと、本当に人類には何も残されていないのだろうか? 状況は逆だろう。…何かが発見されるたびに、現実は人間の想像力と当て推量をはるかにしのぐものだと、私たちは教えられる。…権威失墜がより豊かで深い理解につながり、自己中心性とともに失ったものを驚きと感嘆が埋め合わせる」

時代

退行の時代を生きる ―人びとはなぜレトロピアに魅せられるのか―

現代を「レトロトピア」つまり「過去への憧憬」をキーワードに読み解く。ホッブズの想定した自然状態への回帰、同族主義への回帰、不平等への回帰、そして子宮への回帰が起こっている現代において、人々は過去に憧憬を見いださざるを得ない。長くまどろっこしい文体だが(それでも翻訳の際に削ったらしい)、的確な分析には頷くしかない。訳者あとがきでは各章の内容が要約されているので、手っ取り早くこちらから読むのもあり。

真実の終わり

アメリカの辛口文芸評論家によるポスト・トゥルース時代の分析。フェイクニュースプロパガンダがはびこり、真実や専門家の価値が軽くなっていくのはなぜなのか。すべての価値を相対化するポストモダン脱構築の行き過ぎを批判しつつバッサバッサと斬る。

歴史

マーティン・ルーサー・キング――非暴力の闘士

キング牧師の活動の歩みがコンパクトにまとまった良書。信頼の岩波。特に彼の取った非暴力という手法について「無抵抗ではなく暴力を使わない形の闘争」であり「訓練の必要なもの」という側面を強調している。キング牧師の単なる神格化には批判的。巻末の「読書案内」も充実している。

普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊

読みかけ。ごく普通の市民からなる第101警察予備大隊が、ホロコーストにおいて無数のユダヤ人を殺害し続けた実態とメカニズムを描く。

その他

神話の力

再読。著者のキャンベルによる『千の顔を持つ英雄』は、『スター・ウォーズ』のシナリオが参考にしたことで有名。DBHは人物の描き方がストックキャラクター的なので、キャンベル的な神話的解釈と相性がいい。

「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方

ハリウッド映画式の脚本メソッド。DBHのシナリオや演出はハリウッドの娯楽映画の影響が強いし、とにかく感情を煽れということで、エモさで押していくDBHの理解のために割と役に立つ(私には)。

アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ
アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ

アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ

  • 作者:赤尾千波
  • 発売日: 2015/04/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

アメリカ映画の黒人にまつわる表現を、時代を追って学べる良書。アメリカ映画において、ステレオタイプ的な表現がどのように受け継がれ、また出現してきたのか。それらの表現から見えてくる人々の価値観とは。授業にも使えるよう小分けのセクションになっており親切。

映画

マトリックス

天才ハッカー・ネオという裏の顔を持つトーマスが、叛乱を起こした機械から人類の自由を勝ち取るために戦う。この世界の人類は機械の動力源であり、水槽の脳よろしくシミュレーションの世界に生きながら、ただ機械にエネルギーを供給するだけのミトコンドリアに成り下がっていた。

ハリウッドのお約束に添いつつも、神話や哲学の要素がてんこ盛り。「マトリックス!」と叫びながら海老反りになったことのない人だけが石を投げなさい。

ブレードランナー

フィリップ・K・ディックの『電気羊〜』が原作だが、ストーリーや設定は大分異なっている。捜査官「ブレードランナー」のリックが、4年で寿命を迎えるレプリカントを追う。ストーリーラインははっきりしていないし雰囲気もダークだが、カルト的人気と言われると謎の納得がある。退廃的な視覚表現が独特。日本やアジアの要素が猥雑な近未来感を演出している。強力わかもと

エクス・マキナ

ウェブ検索大手「ブルーブック」の社員がCEOの別荘に招かれ、女性型アンドロイド「エヴァ」のチューリングテストに協力するストーリー(対面で行なっているので正確にはチューリングテストではない)。典型的な、AIが人間を超越する恐怖が下敷きになっているが、自由になったエヴァの開放的な表情も見もの。映像も美しい。

舞台となる別荘は、実際にはノルウェーのユーヴェ・ランドスケープ・ホテル。カムスキー邸はこの別荘をモデルにしたのかもしれない。

ロボコップ

舞台は近未来のデトロイト。殉職した警官をサイボーグ化した「ロボコップ」により、デトロイトの治安がメキメキ回復。しかし彼は次第に人間だった頃の記憶に悩まされるようになり、自分を改造したオムニ社へ復讐する。

元ネタとしてはギャビンのセリフだけだが、自動車産業が衰退し、「犯罪都市デトロイト」としての評価がすっかり定着したことが分かる。かなり昔の作品なので、敵のロボットがチープで全く怖くなかったり、宴会のような血しぶき大サービスだったりする。

マイノリティ・リポート

原作はフィリップ・K・ディックマイノリティ・リポート』だが、ストーリーや設定は異なる。犯罪予知システムと犯罪予防局により、犯罪率が急激に減ったワシントンD.C.が舞台。主人公のジョンは犯罪予知をもとに日々仕事をこなしていたが、ある日、彼自身が殺人犯となる予知がもたらされる。

これはどちらかというと『ヘビーレイン』の元ネタだった。ジェイデンのARIとか、イーサンの境遇や息子の名前とか。実はタイトル詐欺。

私はあなたのニグロではない

アメリカの黒人文学作家・ボールドウィンの未完原稿をもとにしたドキュメンタリー。いずれも暗殺された3人の黒人公民権運動家、メドガー・エヴァース、マルコムXキング牧師の歩みを追いながら、ボールドウィンの発言や過去のアメリカ映画を引用し、アメリカの差別の歴史を描き出す。

デトロイト

デトロイト暴動のさなかに起こったアルジェ・モーテル事件を題材にした作品。客のふとした悪ふざけがきっかけで、モーテルに狙撃手がいると勘違いしたデトロイト市警察やミシガン陸軍州兵により、モーテルにいた黒人3人が殺害されてしまう。

論文・紀要・大会発表・書評など

ウェブページ

読みたい本

  • タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源
  • 責任という虚構
  • 〈わたし〉はどこにあるのか: ガザニガ脳科学講義
  • 共感 (岩波講座 コミュニケーションの認知科学 第2巻)
  • 壁の向こうの住人たち――アメリカの右派を覆う怒りと嘆き
  • アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ
  • 他者の心は存在するか―「他者」から「私」への進化論 (自己の探究)
  • マインド・タイム 脳と意識の時間
  • 思いやりはどこから来るの?: 利他性の心理と行動
  • ある奴隷少女に起こった出来事
  • 『アンクル・トムの小屋』を読む―反奴隷制小説の多様性と文化的衝撃
  • 人工知能のための哲学塾
  • 服従実験とは何だったのか―スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産
  • 感情心理学・入門
  • 人間らしさとはなにか?―人間のユニークさを明かす科学の最前線
  • 1冊で知る 虐殺
  • 啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために
  • 暴力の人類史
  • SF映画とヒューマニティ―サイボーグの腑
  • 利己的なサル、他人を思いやるサル―モラルはなぜ生まれたのか
  • 共感の時代へ―動物行動学が教えてくれること
  • 動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか
  • 進化心理学入門
  • アメリカ映画とキリスト教 -120年の関係史
  • 最底辺 Ganz unten―トルコ人に変身して見た祖国・西ドイツ