※一部…ペルソナシリーズを制作している第2プロダクションおよびその上の人たちのことであり、その他のタイトル(真・女神転生シリーズなど)を制作している第1プロダクションのことではない。また、特に広報やプロデューサー・ディレクター陣に対する愛想であり、実際に手を動かして制作に関わっている方々に対するものではない。
概要
- P3Dは最高の派生ゲーである。
- ストーリーがあってないようなものだから、ストーリーにキレることなく思う存分なぜかダンスしているキャラクターを愛でられる。
- P4以降加速した「シリアスなストーリーでファンを釣る(乱造)派生ゲー」路線が反省されていて大変よい。ファンが求めているのは「お祭りゲー」だ。
- なぜダンスしているのかは気にしてはいけない。ダンサー陣のキャラ解釈を楽しめ。
- 音ゲーとして期待するのはやめておけ。だが一定のクオリティ(グラフィック、操作性など)は担保されている。決してクソゲーではない。ボリュームは少なめ。
- 悲しいことに今なら値崩れしていてお安い! 買うのに躊躇していたそこのあなたもLet's Dance!
なぜP3Dは最高の派生ゲーなのか
「ストーリーがあってないようなものだから」これに尽きる。なぜこの結論に至ったかは、少々説明が必要になる。
派生ゲーにストーリーを求めなくなるまで
ペルソナ4(P4)でようやく一般的な知名度を獲得した(たぶん)ペルソナシリーズだったが、一時期会社がめちゃくちゃまずい状況になったためか、その後P4を始めとしたタイトルの派生ゲーやリメイクをどんどこ作り出した。
(ちなみに中途半端なリメイクをされてしまった初代の女神異聞録ペルソナには同情を禁じえないが、目黒さんを叩くのはお門違いというものである。それまでサウンドやってた目黒さんを、十分なサポートもなしにディレクターにアサインした人が悪い。個人的にはペルソナ2罪罰がPSPでプレイできたのは良かった)
そしてそういったタイトルのスタッフは、言い方は悪いが基本的に「二番手」なのだ。一番手のスタッフは本命に注力してるんだろう。とはいえ、ゲーム部分はコラボ先の他社が制作していたり、アトラスの他シリーズのシステムを流用していたりするので、一定のクオリティは保たれている。問題はシナリオだ。
ストーリー重視のコマンド式戦闘RPGであるペルソナシリーズにおいて、シナリオの出来はめちゃくちゃ大事だ。これが派生ゲーではクオリティがガタ落ちしている。理由はそれだけだ。
派生ゲー乱舞の嚆矢であるP4U(2D格ゲー)では、「正統続編」とやたら強調した宣伝がされた。これでは2D格ゲーに興味のないP4ファンでも気になってしまう。しかし、シナリオ部分のボリュームは少ない上に「俺たちの戦いはこれからだ!」エンドであり、しかもP4の看板を掲げてはいるが、実際は前作のP3の設定が重要な実質「P3U」であり、あとなんか全体的にシナリオ雑いな…という出来であった。2D格ゲーに興味のないプレイヤー(私)からしてみると、ドラマCDで十分なシナリオを、(続編出す気満々で)薄めて伸ばしてクオリティを下げて、分岐しないノベルゲーに仕立てたようなものだったのだ。
P3やP4のドラマCDは基本的に出来がよかったので、あのクオリティは一体どこに!? である(なおペルソナ2のドラマCDはいい意味でカオス)。
(ついでに言うと、P4U販売の過程でスピンオフアニメ作品であるペルソナ~トリニティ・ソウル~がひっそりとパラレル作品であったような扱いに変更されている。個人的にはトリニティ・ソウルはパラレル設定でも構わない…というかペルソナシリーズ全体がもともとそういうものだったのでは? と思うが、歴史は都合よく書き換えられるものだということは覚えておこう。あなたの好きな作品もそういう目に遭うかもしれないのだ)
そして、この後に続くペルソナQでもキャラ描写のダメさにうんざりし(というか苦手なシナリオライターだった)、私はペルソナシリーズの派生ゲーにシナリオを求めなくなった。しかし、アトラスはその後もシナリオ重視の派生ゲーを出し続けたのだ。
(ちなみに派生ゲー最新作のペルソナQ2ではシナリオの一部を外注していることから、人材育成が間に合っていないとか、そもそも人手が足りないことが予想される。これはP3以降のペルソナシリーズを牽引してきたスタッフが、ごっそり別プロジェクトに異動してしまったことも関係していると思われる。なおPQ2の評価は割と散々であるが、未プレイのため言及は控える。ただプロデューサーの発言が不穏なのと、それまでの出来から何となく想像できてしまうのが頭の痛いところ)
ストーリーがあってないようなものだから、安心してプレイできる
かような経緯があった後、ついに「なぜだか分からないけどキャラがダンスしてる派生音ゲー」ダンシングシリーズに、P3とP5も巻き込まれ…新作として登場することになった。私は乾いた笑いが出そうになった。ていうか出た。ペルソナライブの会場で(あ、横アリでやったライブは今までで最高の出来でした。円盤買いました)。
ところが、である。P3Dには(P5Dもだが)今までのようなシリアスかつ低クオリティなストーリーはなく、まあ適当に無視できる程度の取ってつけたような理由のストーリーしかなかった! アトラスはやっと気付いたのだ。「ファンが求めているのはお気に入りのキャラクターを愛でられるお祭りゲーであり、シリアスなストーリーをコマンド式RPG以外の派生作品でやりたいわけではない」ということに。あまりにも遅すぎるが、P3の主人公が本編以外でダンスしているという、ファン的には大変センシティブな状況に必要なのは、「なんかよく分からないけどとりあえずダンスすればいいんだな」くらいの、雑でお花畑なストーリーなのだ。シリアスなエピソードなんて全くいらない、蛇足である。「あらかたやっつけました」で十分なのだ。
むしろそこ(シリアスなストーリー)を重視してしまったP4Uは、P3の人気キャラ2名を絶対に出せない状況を自ら作り出してしまった。お祭りゲー失格である(逆に言えば、スタッフにはお祭りゲーのつもりはなかったのだろう)。
こぼれ話
P3Dも最近のペルソナシリーズ作品の例に漏れず、配信やオンライン上でのシェア行為に厳しい制限が課せられていたが、広報の態度(キャラクターを使ってユーザーを半ば脅すようなネタバレ禁止令を布いておきながら、ネタバレ解禁期間を設定せず、SNS上で盛り上がりたいというユーザーの楽しみを削ぎ、その割にしれっと自分からネタバレに相当するネタを出してくる)に完全に愛想を尽かしたため、それ以降はネタバレ禁止令やシェアに関するルールは守らないことにしている。まったくもって本末転倒だ。
P3Dの評価
P3Dのいいところ
- キャラクターがダンスしているところを眺められる。なぜダンスしているのかは気にしてはいけない。
- ダンサーさんたちの、キャラ解釈を踏まえた上でのモーションがとてもよい。個人的なお気に入りは曲のノリのよさと合わせて順平。なおライブでは荒垣さんが本当に一挙手一投足にわたって荒垣さんだった。プロである。
- 人気曲のリミックスを楽しめる。リミックス大好き。なおリミキサー陣から見てみるに、予算はP5Dのほうがある模様。10年以上前のゲームだししゃーない。
- 操作性は一応問題ない。
- 今めちゃくちゃお安いので買うなら今しかない! 買わないと救われない!
P3Dの残念なところ
- 曲数が少ない。キャラゲーなのでそのあたりは残念ではある。ボリューム不足を補うためのDLCも、ダンスシーンが含まれるものは一部。そのため定価で買うにはやや躊躇する。
- やや扱いに困る女性主人公(ハム子)だが、DLCでこそやればよかったのにと思わなくもない。P3P曲は収録されているのに…?
- キャラゲーではなく作品単体として評価してしまうとやや厳しい。少なくとも音ゲーとして手応えややりこみがいがあるかというと微妙。「初音ミク -Project DIVA-」の流れを汲むタイプの音ゲーなので、ひたすらキャラクターを愛でるついでに音ゲーもできるくらいに思っておくとよい。
- キャラクターの3Dモデルの画風が、原作ではなく映画版のP3M準拠に見える。私には分かる。3Dモデル自体もものすごく出来がいいわけではないが、そもそも原作はデフォルメ等身人形劇だったことを思い出せ。我々は苦節の年月を耐えたのだ。
結論
安くなってるから買え
OPの歌詞和訳はこちら