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やっぱり誤字脱字は氷山の一角

人を選ぶってそういう意味!? LOVEまみれの『十三機兵防衛圏』感想・レビュー

このゲームはある意味で、私のゲームプレイ人生のターニングポイントになるかもしれない。多分。

というのも、クリアしたあと、今後ゲームはソリティアだけやって過ごそうかと一瞬思ったほどだ。一言で言うとめちゃくちゃ苦手な部分があった

人を選ぶゲーム」という評は聞き及んでいたので事前にレビューなどをチェックしたところ、PS4世代のゲームにしては戦闘パートのグラフィックがショボいとか(多分あえてやってるが)、ストーリーの時系列が入り組んでて分かりにくいとかだったので、じゃあ大丈夫だなと思ったのだ。ヴァニラウェアらしく2Dグラフィックは綺麗だし、キャラクターのイラストも好みだし、体験版をやった時点で面白いと感じた。

なのにダメだった。「人を選ぶ」の中に入ってしまった。

なぜかというと、とにかくLOVEまみれなのだ。それも安直なLOVE。

このゲームはキャラクター間の重要な関係性を、恋愛感情でしか描けないらしい。というより、おそらく「相手への強い気持ち=恋愛感情(雑)」なのだろう。登場人物たちはいとも簡単に一目惚れするし、行動原理やトラブルの発端は大体が恋愛感情がらみ。それも、丁寧に描かれているならまだしも、けっこう薄っぺらでインスタントなLOVEだったりする。同性愛カップルが存在するのも、現代の価値観に即した描写だとか未来感の演出というよりも、「重要な関係性を雑なLOVEでしか描けないから」と考えたほうが割と筋が通る。

(個人的には『無人島に男女2人を放り込んだらセックスして子供できてた』のほうがよっぽど説得力があると思うが、まあこのゲームのシナリオとしては0点だろう)

ともかくそのLOVEまみれのせいで、感動的なはずのエンディングでは、突然理由もなく全裸女(※)がメイン主人公の前に現れたかのように思えてしまった。感動が地平線の彼方へ音速で吹っ飛んでいった。

なお、全裸女もプレイヤーキャラクターの一人であり、彼女のストーリーではメイン主人公への思いゆえの行動が描かれる。が、メイン主人公が彼女を大切に思う理由ってなんかあったっけ? 私がイエスブッダだったら、人を誘惑し修行を邪魔する悪魔だと思って、全裸女を撃退していたところだ。

もちろんメイン主人公はLOVEまみれな上に、イエスでもブッダでもないので、そんなことはせず全裸女と新しい道を歩み出すのだが。 ※ネタバレ防止のために全裸女呼ばわりしている。ごめん。

私は恋愛ものに関する耐性がかなり低い方なので、このような雑なLOVE波状攻撃により、私のLOVE許容値をはるかに超えて無事オエエエとなってしまった。LOVEまみれでも、せめてちゃんと描いてくれていればこんなことには…それか件数が少なければ…でもプレイヤーキャラクターが13人もおり、その因縁が絡み合っているので、どうしたって波状攻撃になるんである。

ところで、ゲームとしては労作だと思う。13人のキャラクターのアドベンチャーパート(ほぼノベルゲーム)を進めるごとに、ザッピングするかのように断片的に真実が明かされていくので、最初は何が何だか分からない。が、全貌が見えてくるにつれて、そうだったのか! と思わず唸ってしまう。SFとしてはとても楽しめた。

私が分かる元ネタは少ないものの、恐らく分かる人ならニヤリとしてしまうノスタルジックな要素も満載。これはメインの制作者の好きなものをすべて詰め込んだようなゲームだ。

同時に、「玉に瑕」と言うように、人間と同じくこのゲームもそういうもの。だから安直なLOVEまみれなのだ。決して雑LOVEが必要だからという意味ではなく、ただ必然であるという意味で。

先程も書いたように、ゲーム部分は面白い。しかし、最近いい加減おっさん(※)の作ったゲームにうんざりしていたところへ、見事にダメ押しになってしまった作品なのも確かである。そりゃ一瞬でもソリティアだけやって過ごそうかと思うわ。 ※おっさん…思考の傾向を表す表現であって、性別や年齢を指すものではない

雑なLOVE以外で言うと、例えばキャラ描写は基本的にデフォルメされているが、特に一部の女子キャラクターの描き方は、ああ、おっさんが作ったザ・女子! ってやつだな…と思ってしまうところが多々ある。

私は今後、作家性の強いコンシューマゲームに手を出すことを躊躇し、インディーゲームやストーリー性の薄いゲーム、規模の大きいチームがユーザーを意識して作ったゲームなどを進んで選ぶようになるかもしれない(し、そうならないかもしれない)。少なくとも今後のゲーム選びの基準を見直すきっかけになった

なおゲーム性自体は好きなので、今は戦闘しつつミステリーファイル埋め中である。

LOVEまみれが気にならないという向きには、好みに合いそうであれば一度やってみる価値はある。もしもあなたが選ばれた人ならば。

BGMは全体的によかった