かたくりかたこりかたつむり

やっぱり誤字脱字は氷山の一角

『バウンド:王国の欠片』レビュー 恐怖を克服する美しき舞と、砕け散った家族の物語

※ネタバレというほどでもないですが、本編の内容への言及あり。致命的なレベルではないです。

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はじめに

『バウンド:王国の欠片(以下『バウンド』)』は、PS4を買ったら真っ先にやろうと決めていたゲーム。とりあえずはトレーラーを見て欲しい。とにかく映像が美しく、スクショの手が止まらない。フォトモードあり。

本作はSIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)のサンタモニカスタジオと、ポーランドのプラスティックによる共同開発。

なおプラスティックの前作『DATURAPS3用ゲーム)』は途中までプレイ。残念ながら画面酔いがひどくて進められなかったが、個人的には気に入っていた。本作は『DATURA』のように画面酔いはしづらく(人による)、ある程度分かりやすいストーリーで、ビジュアルも前作よりは広い範囲にリーチしそうな感じだ。個人的に『DATURA』の綺麗系不気味なビジュアルも大好きだが。

クリアしたかったなー

幻想的なビジュアルで描かれる内面世界

主人公は、彼女が幼い頃に離婚した父を訪ねる道中で、小さい頃の落書き帳を見返しながら空想の世界に浸る。幼い頃の記憶から構築された内面世界を、「姫」として舞いながら過去の傷や恐怖を克服していくのがストーリーの主な筋書きだ。

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この内面世界は姫の母である女王が治める王国。女王は姫に対し、王国を脅かす怪物を追い払うよう命じる。それぞれ「王国=家庭、女王=母、怪物=父」の心的イメージだ。主人公は恐らく出産を間近に控えており、女王からも、やがて自分の王国(=家庭)を持つことが示唆されている。主人公が姫となって舞うのは、ライフイベントによって否応なしに過去の記憶と向かい合う必要があったからだ。

原題の『Bound』は「束縛された」という意味だが、その通り主人公は過去に縛られていて、これはその軛(くびき)から自由になるための物語なのだ。

f:id:katakurikatakori:20210207145159g:plain 姫は怪物(=父)をひどく怖がり、怪物が叫んでいる間は操作が利かなくなる

主人公の内面世界は、抽象的なグラフィックが独特で美しい。モンドリアンバウハウスなどの要素を取り入れた幻想的な風景だ。なお、背景が常にうごめく映像美は、開発元のプラスティックがもともとインタラクティブデモを作っていた会社であるところが大きいそう。

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姫は舞うことで襲ってくる恐怖や怪物を克服していくのだが、その動きはバレエがベースとなっており、攻撃的ではなく軽やかなモーションだ。これが幻想的な世界ととてもマッチしている。

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f:id:katakurikatakori:20210207145751g:plain 端から落ちたあとの復帰モーションですらこの優雅さ

私は小さい頃にモダンバレエを習っていたので、姫のモーションも懐かしくて終始楽しかったのだが、現に主人公自身も幼い頃にバレエをやっていたようだ。その経験が内面世界の「姫」という像とダンスに反映されている、という設定なのだろう。

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ゲーム紹介やレビューなどではコンテンポラリーダンスと書かれていることも多いが、講演レポートにもあるように、実際はクラシックバレエの基本的な動きと体操的な動きをミックスした基本モーションと、モダンバレエ的なダンスだ。そこまで難解ではないので、ガチのコンテンポラリーダンスより取っつきやすいと思う。

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[GDC 2017]現代美術とコンテンポラリーダンスを取り込んだ「バウンド:王国の欠片」は,どのようにして作られたのか

姫の舞は単に美しいだけではなく、敵の攻撃をはじくことができる。このトゲのような物体は「過去の記憶や恐怖」の象徴なのだが、それらを文字通り振り払えるのだ。

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また、「思い出のかけら」が集まると過去の記憶を表した絵になるのだが、この「思い出のかけら」が道しるべのように配置されており、天地が反転する仕掛けがあちこちにある『バウンド』では、進行方向を示すという地味に重要な役割を果たしている。このように、ストーリーに必要な表現と、ゲーム的に必要な要素とがうまく組み合わさっている

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天地がぐるりと一周しても…

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かけらがある方向に進んでいけばいい

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思い出のかけらが集まって絵になる

また、先に進むためのヒントが影で表示されるなどのさりげない演出もよい。

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姫や女王などのわずかなセリフを除けば、『バウンド』では文字情報は少なめに抑えられており、それが幻想的な内面世界への没入感や、プレイヤー側の解釈の自由さにつながっている。

その他ゲーム的な話など

『バウンド』は基本的にビジュアルと体験重視のゲームで、アクションとしての難易度は低め。だが、タイムアタックモードにチャレンジしたり、姫が端から落ちる設定にすると、途端にいわゆる「ゲーム的」な手触りになる。ちょっと意外。思わぬところにショートカットのルートがあったりするので、好きな人はやってみるといいだろう。私はこの手のは下手くそなことに定評があるのでやっていないが。

私は画面酔いしなかったが、久々にプレイしてみたところカメラが結構ぐるんぐるんする上に天地反転したりするので、酔う人は酔うかもしれない。カメラスピードを落とすと少しマシになるかも。

なお、ややネタバレになるが、最後にある選択肢が登場する。個人的には、下手すると今までのストーリーがなかったことになりかねないので不要だと思う。…というか、選択肢の意味が分かりにくくて、最初は意図したのと別の選択肢を選んでしまった。ストーリーの題材が題材なので、どうしても一方の選択肢を選びたくない人もいるだろう。ただ、選択肢の意味が分かりにくいのは単純にユーザビリティの問題だ。ここだけはちょっと残念だった。

BGMはウクライナサウンド・デザイナー、ミュージシャンのHeinali(ヘイナリ)。静かで美しいメロディーとハーモニーの曲だが、盛り上がるところはダイナミックでお気に入り。ゲーム中ではインタラクティブに音楽が切り替わるので、そのあたりも聞いていて楽しい。

おわりに

幻想的なビジュアルと「体験」というメディアであるゲームが大好きな人(私だ)には大変おすすめできる作品。PS4を持っているなら一度やってみてほしい。

※ただし、ストーリーに関しては、親の離婚経験があって、そのあたりでウッとなりそうな人はやや注意。少々辛いかもしれない。

フォトギャラリー

俺の『バウンド』フォルダが火を噴くぜ

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※画像・動画はすべてPS4版ゲーム『バウンド:王国の欠片』より。
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