かたくりかたこりかたつむり

やっぱり誤字脱字は氷山の一角

『真・女神転生V』感想・レビュー 古さと新しさと、それから現実の狭間でちょっと悲しみ

はじめに

真・女神転生』シリーズのやっとの最新作ということで、発売日にプレイを開始しました。したのですが…どうにも割り切れない残念な感じが漂っています。

なお、Nルートエンド(通常)の後にLルートエンドとCルートエンドを見て、ちょっとがっかりした状態でこれを書き始めたので、全体的にションボリした調子になってるのは平にご容赦です。2周目始めました(冷やし中華的な)。

フィールド

今回一番の目新しい進化でしょう。フィールドがオープンワールドになり、砂漠化・廃墟化した東京を、リアルサイズでうろつき回る悪魔の間を縫って走り回る楽しさがあります(と言っても『真・女神転生IMAGINE』でやってると言えばやってるのですが。一瞬ログインした思い出。コンシューマ機では初ということで)。これまでもダンジョンやフィールドが3Dのシリーズ作品はありましたが、今回は二次元方向の移動に加えて「上下移動」が加わった形です。

今作は動画撮影禁止なのが残念

特に最初の砂漠では坂道をシューッと滑り降りたりするのが楽しい。ダッシュモーションがアラレちゃんなのはご愛嬌。

しかし、このオープンワールド「風」のフィールドというのが曲者です。フィールドを堪能しつつ走り回っていると、ジャンプでもギリギリ超えられない段差、広すぎる見えない壁、空を飛ぶ当たり判定のでかい敵、マップを確認しにくくする障害物(マガツカ)、見えているのに辿り着けない宝箱のオンパレード。そして気付く。これはフィールドではなくフィールドの顔をしたダンジョン、しかもいつものアトラスの、ユーザーフレンドリーでない意地悪なダンジョンなのだと…。

100%分かってやってる

「ミマン」という真V版コログ(『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』でフィールドのあちこちに隠れているキャラ。フィールド探索の誘因のひとつ)のようなキャラクターがいることからも、一応オープンワールドゲームを意識してはいるはず。でも、「フィールドだろうとダンジョン仕様にしなければ」という強迫観念か思い込みでもあるのかもしれないですね。

どう考えても汚いコログである。心の暴力団よりはいいか…

おまけにマップはわざと(?)分かりづらい仕様。高低差によって行く手を阻まれることが多いフィールドなのに、その肝心の高低差がマップで把握しづらい。

マップ

実際

低い方から登れます。が、このマップ見て分かるか!

とまあ、行きたい場所によっては非常にストレスフルなフィールドです。しかし、段々「ここは多分直接は行けないから、こっちから回り道して細い道から行けるな」というのが分かってきて、慣れって怖い。

また、同エリア内のセーブポイント間の移動(ファストトラベル)はロードなしですが、各エリア間を直接行き来することはできず、普通にロードが挟まるので、そういう意味でもオープンワールド「風」です。PVなどを見た時点では完全オープンワールドかと思っていたのですが、そんなことはなかった。なお、エリア間移動のロード時間はそこそこ掛かります。悪魔解説が流れるので、すごくイライラするとかではない。

できれば完全オープンワールドのフィールドを楽しみたかったな、という思いはあるものの、そうでないために楽しみが削がれているわけではないので、そこまで気にならないです。

3Dモデル・モーション

一応、最近のシリーズ作品では一番きれいです。個人的にはやたらテカテカした質感があまり好みではないのですが、やってるとあまり気にはなりません。ただしリアルではない。

頻繁に目にすることになる主人公の後ろ姿は、波打つ長髪が印象的

モーションは、特に新規悪魔が凝っています。この辺は作った人たちも楽しんで(苦労して)る感じが伝わってきて、純粋に嬉しいですね。あ、でもオーディンはバラ吹いてなかったな。あれはデモということで。

最後のバラ吹いてるシーンに一部界隈がざわついたやつ(多分)

主人公

評価:1000無量大数

専用スキル用のスキル枠が足りない

これが美少年ってやつでさァ! って蕎麦屋の頑固なオヤジが出してくるやつだ。その割に結構面倒くさがりだったりダジャレがすべったりするけど。デザインした土居さん、モデリングした人、モーションつけた人、その他何かしら関わった人すべてが、常に自販機で当たりが出ますように…。

アオガミと合一してナホビノ化した姿は、××××の要素も相まって水モチーフなのかな? と思いましたが、やはりそのようです(土居さんコメントより)。

バトル

『真III』以来、まだプレスターンやってるのかよと思わなくもありません。が、下手に刷新したりはせずに、過去作や他シリーズの良いところがちょうどいい塩梅で組み合わされ、丁寧にブラッシュアップされた印象を受けます。

ただし、面白みが分かってくるのが序盤を少し過ぎてからなのがもったいない。レベル補正が強いのはいつものことですが、今作ではさらに強力。そのため弱点を突いても敵が硬く、特に序盤はプレスターンの爽快感をなかなか感じづらいところがあります。というか、今回のバトルは爽快感ではなく、パズル的な楽しみに寄ったバトルなんだと思います。

面白くなってくるのは、店売りアイテムを買い揃え、各種スキルや戦闘が有利になる神意(任意で取得できる常時発動スキル)が多少出揃う頃です。今作の戦略の幅広さ・柔軟さはかなりのもので、ボス戦で倒されても、戦略を変えればレベル上げをせずに勝てたりします。もちろん、どうしても倒せないという場合はレベルを上げてゴリ押しで勝てるといえば勝てますが、戦略を練る時間とそれが上手く決まった瞬間のほうが楽しい。

有用なアイテムが多い・仲魔がアイテムを使用できるハードルが低いなど、一見楽に見えますが、それは「アイテム使用を前提とした戦い方」だからです。というのも、主人公も仲魔もスキル枠制限がなかなか外れず、すべての枠が解禁されるのは終盤。欲しいスキルがあっても泣く泣く諦めざるを得ない悲しさよ…。つまり「限られたスキルと所持数制限付きの消耗品アイテムで頭使って戦え」ということなのです。ついでに言うと今回はMP消費もかなり激しく、何も考えないでスキルを使っているとあっという間にスッカラカンになります。

なお、ボスや高レベル帯でも弱点のある悪魔がほとんどで、そこは過去のプレスターン制バトルの惜しいところ(ボス戦だとこっちのプレスアイコンが増えにくい)がきちんと克服されています。

残念なのは、序盤でのチュートリアルや強敵の警告などは丁寧なのに、肝心のバトルの仕方や戦略についてはほぼノーヒントなこと。シリーズのお約束に疎いプレイヤーには効果的な戦い方が分からず、やたら敵が硬くてレベルを上げてゴリ押しするだけのゲームになってしまわないか、他人事ながら心配です。一応サブクエストの戦闘がヒントになっていることもあるらしいのですが、そういうことじゃない。

また、バトルのテンポも微妙に悪く、演出スキップのためにボタンをしょっちゅう押しまくる(か演出カットする)ことになります。この辺はなんとかしてほしかった。

今回の死亡は花見です

悪魔合体・育成

悪魔合体はかなり手軽でやりやすいです。相変わらず全書引き出し価格は高いけれども…。ただ、金策も結構あるのでそこまでカツカツでもない。

今回も「逆引き合体」が実装されていて楽。もちろん従来の2身合体もできます。真IV系統ではできた「スキル・属性の指定をして検索」などはできませんが、今回は悪魔の数がおそらく少なめだし、どうしても欲しいスキルは後から写せ身というアイテムで追加できるので、特に支障はなし。

合体時の継承スキルは○×ゲームではなく任意で選べますが、悪魔ごとに各属性の適性があり、また専用スキルも多いため、没個性になりにくいです。

ただし演奏はセルフサービスとなります

写せ身は主人公にも結構使いますが(主人公専用スキルもある)、『真III』のマガタマと違って消耗品なので、耐性ひとつ変えるにも結構悩むんだこれが。楽しい。

UI/UX

端的に言って最悪…とまでは行きませんが決していいものではない。『♯FE』のUIを中途半端にくっつけたような画面は違和感しかなく、アートディレクション的なものは大丈夫か心配になります。作中の雰囲気と合わないポップさ、ただでさえ表示させる情報量が多いのに、UIのフォントの種類が多くてまとまりに欠ける・グラデーションのかかったテキスト欄など、さらに雑多な情報を上乗せしてどうする。

また、メニュー画面に遷移するまでの時間も、妙に長く変な引っかかりを感じます。実際に時間が掛かっているというよりも(掛かってはいるんですが)、紙が虫に食われるような遷移アニメーションや、スキル名などが一行ずつタイミングをずらしながらスライドインしてくるアニメーションなどのせいで、余計に遅く感じるのかもしれません。

ただ、デザイン性やレスポンスが多少どうかしている点はあるものの、「あの項目はどこいった」みたいなのは基本的にないです。不格好だけど機能が致命的というわけではない、しかし…というやつ。

ちなみに、最近のアトラスゲーといえばかっこいいUI、みたいな感じがありますが、あれはペルソナシリーズを開発している第二プロダクションの話。『真・女神転生』シリーズは第一プロダクション開発です。

ストーリー

薄いです。おそらく今回一番の問題点。「淡々とした描写」とかそういう問題ではない。私はストーリーが薄いRPGが悪いとは全く思いませんし、特別な体験をさせてくれるゲームなら、込み入ったストーリーがなくても十分楽しいはず。

ところが『真V』は、ドラマがあるところにはある、ないところには本当に何もない、というムラが存在するために、「ストーリーが薄い」と感じられてしまう。劇的な展開はちゃんとあるんですが、山場に至るまでとその後が薄いために、「何かやってたな、ところであいつなんだったんだろう」という印象になりがちです。最初から人間キャラの描写がモブキャラレベルに薄かったら「そういうもん」として理解しただろうし、モブキャラにしては存在感強いな…くらいに思ったかもしれません。

ベテルの各支部にしても、離反したのち各勢力がしのぎを削って王座を目指すのか! とワクワクしていたら、「王座は目指さないけど王座に向かう奴は邪魔する」という、なんとも肩透かしな展開でした。ただのお邪魔虫じゃないか。あのかっこいい解散劇はなんだったんだ。

ムービーの構図はかっこいいんですが…

人間キャラ同士の関係が初っ端から殺伐としている『真III』ですら、ドラマはちゃんとあったんだな…と思い直しました。主人公は大体傍観してるけど。『真III』の同級生キャラ同士の関係性はどうよとは思うものの、日常から突然非常事態に巻き込まれて、それまでちょっとだけ傲慢だったりちょっとだけウザかったりしただけのただの高校生が、理不尽な目に遭いつつも力を与えられたことによって、思想を先鋭化させて突き抜けていく過程は割と描かれてるんですよね。『真V』はそこを思いっきりスキップしてしまっている。想像の余地すらない無。もっとも、同級生の一人、太宰イチロウは割と描かれている方ですが、それでも尺が短いのでやや急な印象です。今回一番掘り下げられていたのはLaw陣営の大天使アブディエルだったかも。

ティザートレーラーやPVが出始めたあたりから不安だったのが、「どういうストーリーなのかがほとんど分からない」ことだったんですが、クリアしてみて考えるに、ストーリーの分量が少ないためにあえて出していなかったのではないかと。

日常の東京の描写が少なく、人間キャラの描写も薄く、ついでに主人公は合一神となってしまうので、「東京のために」「人間のために」行動する動機づけが弱いです。序盤~中盤くらいまでは、それでもまだなんとかあるんですけどね。個人的な話、人間嫌いなので、ストーリーやエピソードで東京や人間たちに愛着を持たせてくれないと、なんか別にどのルートでもいいや、人間滅べし、という気分になってしまう…。

余談・各アライメントと時代精神の風刺について

2021/12/15追記
※当初書き散らしたものがまとまりがなかったので、一旦別にしてみました。それでも結構とっ散らかっている。

各勢力同士の対立においては、「多様性」という今時っぽいワードを入れつつそれをチクチクはするものの、特にLとCエンドでは一神教多神教の捉え方があまりにも雑で、風刺ごっこはやめときな? という気分になりました。正直、アトラスのゲームで宗教・神話関連のネタに失望するとは思ってなかった。宗教や政治的スタンスを戯画化し、世界情勢やその時その時の時代精神を風刺する傾向の芸風とはいえ、それは風刺が尖っていて刺さるからいいんであって、浅いなら無理にやらなくていいんですよ。この部分にはかなりがっかりさせられました。

が、大元のコンセプトは理解できるしメガテンらしい。ゲームをプレイしてて何か納得いかねえな、と感じたのがおそらくイラつきの原因なので、語り方の問題かと。

今回は唯一神が不在で絶対的な基準がなくなった世界が舞台。それは今の世界情勢―つまり、それまで「グローバルスタンダード」であった、自由や人権といった民主主義的な西側勢力の足元が揺らぎ、ロシアや中国、中東地域など、異なる価値観が台頭してきた状態を映したものなのは明らかです。また同時に、ひとつの国の中でも守るべき規範が揺らぎ、多様な価値観がぶつかり合っている状態のメタファーでもある。そのあまりにも分かりやすい例がアメリカなわけで…。

「安定してるけど、もはや根拠をなくした既存の規範 VS. それまで抑圧されていた複数の新機軸が勃発して、百家争鳴の大混乱」という構図。そういった現実を反映してか、各アライメントも複雑に立場が絡み合っています。例えばLaw側のアブディエルは、もはや唯一神が不在であるにもかかわらず、その存在をいまだに信じ、神の作った世界を守ろうとします。一見妄信的な行動ですが、現在の中国やロシアなどに対して「民主主義」「人権」などを声高に叫ぶ西側勢力(日本含む)をそこに見出すのは割と簡単です。そして、Chaos側の面々は「アラブの春」などで次々と既存の体制側が倒されたことで、余計に混乱が広がり、以前より状況が悪くなった情勢を思わせるフシがあります。

同時に、今はマイノリティなどの抑圧されていた側がその存在を主張しだす「多様性」の時代であり、「神の元での万人の平等」と「多様さ」を、単純に「良い/悪い」に振り分けないのは、結構意地悪でもありつつ「らしさ」を感じさせる点、ではあるのですが…。

冷戦もとうに終結し、アメリカを筆頭とする西側勢力 VS. ロシアを筆頭とする東側勢力、という分かりやすい対立構造もないため、よく言えば価値観が多様、悪く言えばまとまりのない、常に争いが勃発する現代を戯画化している…のは分かります。みなまで言うな。けれどもその掘り下げと表現が浅い。別に「多様性は絶対! それを皮肉るなんて許せない!」なんて言いませんよ。ヤード・ポンド法は滅べってみんな思ってるでしょ。浅い風刺ごっこやるくらいなら、最初から引っ込んでな、と感じただけです。今時のいい感じっぽい「多様性」というワードを皮肉るなら、そこはちゃんとやって欲しかったし、中途半端に言うくらいならやらないでいいよ、と。

多様性って日本だと「みんな違ってみんないい」みたいなホンワカしたものに思われがちですが、本来は「自分たちを認めろ」「いや認めない」という熾烈な戦いを含むものなので、別に穏やかでもなんでもないんです。なので、ホンワカしないのはまあメガテンらしいなとは思うんですが…。どうせやるなら、それこそ唯一神を倒すのと同じくらいにやっちゃってもいいんじゃないかなと。

もっとも、Law側が秩序のために秩序を破り、Chaos側も一神教がやってきたことと似たりよったりな面があったり…と、Law勢力とChaos勢力のスタンスや行動はちゃんと割と複雑になっており、単純にChaosイェーLawぶっつぶせという感じではないですね。輪をかけて正解感がない。今回Lawがそもそも最初から負けてるせいかな。神は死んだ。

Chaos勢力にしても、Law側から見てChaosというだけで、Law的な側面も結構ありそうだし、どちらにも与しない八雲も、負けず劣らずかなりの矛盾の塊です。掘り下げが浅かったのは本当に残念。

余談・一神教多神教の共通点と、設定がもったいないという話

今回は、悪魔解説に「かつてはどこそこの神だったが、その地域を征服したこれこれの勢力によって悪魔・邪神に貶められた」という記述が多め。これは明らかに意図的で、実際、クエストでも唯一神ヤハウェ)によって貶められたことを恨み、復権を企む古い神々が登場します。ただこれ、一神教アブラハム宗教)だけの話ではなくて、多神教も似たようなもんなんですよね。

(※ややネタバレ)Chaos勢力のトップはとある天津神なのですが、天津神といえば葦原中国(=ざっくりだいたい日本列島)を何やかんやありつつ自らに従わせて平定した勢力です。譲歩せず最後まで従わなかった土着の勢力は、もちろんしばいて冷遇。作中でも、国津神たちが天津神に同調していなかったり、不満を持っている描写があります。

(更に余談ですが、何か一大事業を成そうとした時の日本の神々のゴタゴタっぷり、現代でも普通に見られるので非常に既視感があります。昔の人もたらい回しや譲り合いの精神や事なかれ主義で揉めてたんだろうな…)

そういうわけで、一神教のように「私以外のやつを神とするな」という教義こそないものの、多神教だって力で負かした勢力は貶めまくってます。なのに「序列はあるけど八百万の神が存在する多様性のある世界がうんたら」と、負けた側じゃなくて征服した側の天津神が言っている。この辺の無意識の欺瞞を突いてくるのかなー! とワクワクしていたらそれ以上は別になかったので、ちょっと肩透かしを食らいました。も、もったいねーネタを…!

一神教 VS. 多神教」の構図は『真IVF』でもありましたが、単純に「一神教よくない、多神教はいい」としているわけではないので、本当に設定がもったいなかった。一応、Cエンドで多少皮肉っぽい解説は入りますが、えー? それだけー? そういう意味でもストーリーは薄いです。

2022/01/16追記

(※ネタバレあり)
あえて言えば、ツクヨミ記紀での記述が異様に少ない神なので、単に一神教憎しというだけではなく、作中にたくさん出てくる「返り咲きを画策する神々」の立派なお仲間ですね。

シリーズ作品の扱い

過去作の扱いは「彷彿とさせる要素はふんだんにあるが、直接的な関係は基本的にない」という塩梅。ファンサービスと新規層向けの両立、かつ設定上の矛盾点などを気にしなくて済むので、取り扱い方としては上手い。平行世界がデフォルトだとしてもアトラスとは思えない(褒めてます)。

ちなみに、今でも人気を誇る『真III』のみ多少例外かも。「マガツヒ」「カグツチ(っぽいもの)」「アマラ輪転鼓」「18年前の東京受胎(真III発売年)」「砂漠化した東京」など、彷彿とさせる要素が多め。DLCでも人修羅とゆかいな魔人たちと戦えます。

『真V』発売に先駆けて『真III』のHDリマスター版も発売されましたが、一部動作もっさり(修正パッチ配信済み)などはありつつも戦略的に正解だと思います。アトラスとは思えな(略)

でも、いきなり「東京受胎」って言われても、分からない人は分からないよね…。やっぱりストーリーはかなりオミットされたのでは。

BGM

コンポーザーは小塚さんと小西さん。今回は全般的に不思議な音色の曲が多かったように思います。プログレなのにフワフワしてる…? フィールドでは若干オープンワールドっぽくも環境音寄りすぎではない、でもどこか茫漠とした音色が印象的でした。早くフルサントラが欲しい。

その他ゲームシステムなど

今の時代にオートセーブ非対応(!)ですが、そもそもゲームシステム的にオートセーブと相性が悪いため、「セーブポイント増加+無くならない帰還アイテム」くらいでちょうどいいのかもしれません。ただ、ボス戦で負けた時くらいはさすがにリトライさせてくれてもいいんじゃない?? 飛ばせるとはいえムービーを何回も見るのは割と興醒めだし、一旦タイトルに戻る意味はあるのか? ないよね? あと、アトラスはいい加減ギャラリー機能を付けてくれ。

ルート分岐方式は『真IVF』に近く、属性値は常に変動するものの、ルートは最後の選択で決定。今の時代これでいいと思うんですよ。各ルートのためにまた周回なんて皆ができることじゃないし、最後の最後で「いや、やっぱこっち」と思うなんてよくあることじゃないですか。『真III HD』をプレイしていて思ったんですが、やはり「いや、そんな前の選択肢なんか覚えてないし」というのが実のところ。

その他、ラージマップも一応あるものの、あまり出番はないです。個人的にあの画面が好きでないのですが、伝統だから入れてあるんだろうな。『真V』の過去作の扱いのスタンスとしては妥当だと思います。ただやっぱり出番が少ない。

貴様さては株式会社アトラスの社員だな

主人公の通う学校も、×××(ネタバレのため伏せ字)してウワー! となる以外に、あんまり存在する意味が…ないかもしれない…。序盤以降は立ち入り禁止になってしまうので。

総評

もちろん楽しめた部分はあります。ありますが、何というか、完全版が待たれる感じの出来です。アトラスの完全版商法にはまったくもって反対ですが、これは…。

本当は、プレイしてて「ここがいまいちだけど、制作上の都合でできなかったんだろうな」なんてことは考えたくないんですよ。最近のゲーム開発は時間とコストがかなり掛かると、素人でも何となく聞き及んではいますが、純粋にゲームの世界に没頭していたい。

アトラス作品のファンとしては、正統進化している部分あり、過去作ネタを丁寧に拾っている部分あり、そこは嬉しい。大胆な刷新はありませんが、変に萎縮している感じもない。アトラスのファンはいい歳して、いやいい歳だからこそ面倒くさいのが多いので、変にいじると罵詈雑言の嵐。見るに耐えない(私がそうでない保証もないですが…)。その点に関しては今作はすごくうまくやってます。

でも、私はアトラスのゲームだけをやっているわけじゃない。今時のゲームとして見た時、どうしても古臭さや一歩遅れている感が否めない。

グラフィックひとつとっても、「今までのシリーズ作では最高の出来、でも世間的には別にそんなに…」というレベルで、万事そんな感じ。アトラスゲーは美麗グラフィックを売りにしてないにしても、です。

なんか、悲しいな、すごく。今のアトラス(の第一プロダクションができること・できないことが浮き彫りになってしまっている。特にできないことの方が…。あの頃に戻ってくれなんて思わないけど、今の時代のゲームとして足りない部分があまりにも多くて。インディーゲームじゃあるまいし。しかも今の売れてるインディーゲームってよく出来てますから。

アトラスはどうも「面倒でストレスフルなのが高難易度」だと思っているフシがあり(細かい調整ができないだけかもしれない)、コアなユーザーもそういう面があります。ですが、「高難易度だけどストレスフルではない」という丁寧な作りのゲームがたくさんある中で、もういい加減そういうのは時代遅れです。今作ではかなり改善の兆しがあるとは言え、昔の考え方から脱却しきれていないところがそれでも見受けられます。面倒なフィールド(実質ダンジョン)とか。と言いつつ、『真V』はかなり快適な方なんですけどね。他社のゲームと比較してしまうと…というやつです。

それでも、『真III HD』をプレイした時に「名作には違いないけど、今の時代にプレイするのは辛いな」と思ったのも事実。そういう意味でも、『真V』はやはり今の時代のゲームです。

面倒と評判の悪魔城ギミックの削減や、寄り過ぎカメラの視野角修正パッチなどの対応は素早かったです。広報もきちんと仕事をしており、この辺は多少ユーザーフレンドリーというか真っ当な(?)ゲーム制作会社になったんだなあ…とちょっと涙が。もともと悪ノリが過ぎたのはペルソナシリーズ広報だけなんですが、真・女神転生シリーズ広報はあまりにも動かなさすぎて「し、死んでる…?」と心配されていたくらいだったので。以前、広報要員の募集をかけていたので、たぶん人が増えたんだろうな…それはよかったな…。

悪魔城のギミック、通称「扇風機」らしい。私は「微妙なアクション加減がアトラスだな」くらいしか思いませんでしたが、ターン制バトルをやりたいユーザーがこういうダンジョンを求めているかというと、それは多分違う。

2周目を始めてみて、やっぱり冒頭でワクワクする気持ちは変わらないので、そこから先が色々残念だったんだなと。バトルは楽しいし、悪魔も生き生きと動いてるし、主人公は1000無量大数点なので、押しも押されもせぬ名作ではないけども、フィールド走ってバトルして合体してる分には楽しいです。今ちょっと悲しいのは、(ほぼ)各エンドを見てがっかりしたせいもあります…。

死んでないよ!

少なくとも今の所は、Switchでフィールド走って悪魔と戦って合体して、というのがやりたい人にだけおすすめなゲーム、でしょうか。

追記(2021/12/31)

真エンド(正式名称が分からない)見ました。これは好きだな! 例のシーンで誰もいないのがとてもいい。人間は滅べ…じゃなくて、別にお前の遺志を継いだわけじゃないもん、と各ルートで思っていたので。終盤で霊圧が消えがちだったアオガミの見せ場があったのもよかったです。ただまあ、その後どうなるかは「神」のみぞ知る。

画像はすべて『真・女神転生V』より
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