※核心は避けていますが、ストーリーのネタバレを多大に含みます。
『HADES』やりました。
冥界の王子ザグレウスが、とある理由で実家(冥界)から脱出するため、父親である冥王ハデスに立ち向かう、ギリシャ神話をモチーフにしたローグライク。
…なんですが、ストーリーは一言で言うと「俺と親父の壮大な親子ゲンカ」です。親父のバーカ! もう家出してやる!


インディーゲーム特集やローグライク特集なんかによくいるので、もはや何周遅れなんだよって感じ。が、いや待て説明させてほしい。
もちろん『HADES』のことは知ってたし気になってたのですが、とあるレビューで「ローグライクとしては優等生でつまらない面もある」的なことを書かれていたので、アクションゲーム下手くそ芸人なこともあり、ずっとやらないでいたわけです。なんと2023年の年末年始にプレイ(※2018年初出、2021年日本語版発売)。これが私のジャストタイミングだ。
結論、優等生でいいじゃない。
もちろん、個人制作の尖ったインディーゲーがダメってわけじゃありません。でも、優等生で悪いことって特にないかな…。
ローグライクには疎い、というか多分『HADES』が初かもしれない人間が思うことなので、多分にローグライク以外の要素も含めての優等生評価です。ほぼストーリーと設定について。でもローグライク初心者がクリアまで楽しくプレイできるんだから、やっぱりローグライク要素も優秀なんだと思う。
どういうゲーム?

主人公のザグレウスが死と再生を繰り返しながら、「なんぴとも逃れられぬ(There is no escape)」と謳われる冥界からの脱出を目指します。なんで彼は家出するのか? 冥界にいるはずのあの女神はどこに? という疑問も、周回家出するうちに明らかに。
家出王子を手助けするのは、個性豊かで一癖も二癖もあるオリュンポスの神々。要するにザグレウスの親戚たちです。
一方、実家にいる冥界の神々とは個別に交流でき、恋愛要素もある神ゲー(神だけに)。強烈にキャラ立ちしている面々との交流も楽しいです。
とりあえず頑張れザグレウス! 反抗期だよザグレウス! でも部屋はちょっと散らかり気味だぞザグレウス!
キャラクターの描写解像度が高い
『HADES』は硬派に見えて結構キャッチーなんですが、登場するキャラがどれも丁寧に描かれていて好感が持てます。
ある程度記号的ではありつつも、どこかリアルかつ強烈にキャラ立ちした描写がめちゃくちゃ上手い。元ネタのギリシャ神話の登場人物からしてそもそも濃いけども。
まあ、理解度の高い犬ときょうだい(男女どちらでも)を撒いておけば大体釣れますからね私は。その辺は差っ引いてください。
実家の犬

愛しさを犬の形にしたら、きっとこうなるケルベロス。ザグレウスんちの庭(冥界)の番犬です。地獄の門のところに狂犬病予防接種済のシールが貼ってあると思う。

元犬飼いとしては、スタッフの中にわんこLOVEが何名かいると見た。部屋の隅に落ちてる犬の毛の愛しさよ。集めて丸めよう。

歳を経るごとに、活発だった犬でも段々落ち着くところでまったりするようになるよね。ふかふかベッドを敷いてあげたからそこで寝るんだぞ。今日もかわいいね。
そんな俺も親父とケンカ。つらいけど、愛犬を置いてでも実家を飛び出すぜ! 許せ犬!

なんとザグレウスの前にケルベロスが立ちはだかる場面もあるものの、犬は無事なので安心してください。
きょうだい
なぜか分からないけど私はきょうだいものに弱いです。そしてキャラ描写が秀逸な『HADES』の兄弟が刺さらないわけがなかった。
『HADES』に登場するのは、死の化身タナトスと眠りの化身ヒュプノスの兄弟。めちゃくちゃしっかりしていて仕事できるけど寡黙で愛想に欠けた兄&いつも居眠りしていて仕事もいまいちだけどお喋りで愛嬌があって主人公に戦闘のアドバイスもしてくれる弟。対比がバチバチです。あらためて文字にしてみると、何だこの「ぼくのかんがえたさいきょうのきょうだい」みたいなの。
タナトス・ザ・上の子!


お任せください!


クソ真面目か?


雇用主と友(および母)の間で板挟み。お兄ちゃんはつらいぜ。
ヒュプノス・ザ・下の子!


ほんそれ。何があってもお兄ちゃんは知りませんからね!! でも下の子もいつかは成長するからさ、希望を持とうや…(※私は上の子)
周回死にゲーの清涼剤として、実家の犬もっふに次ぐ癒しポジションのヒュプノスですが、地味にこの仕事しなさっぷりがキャラエピソードに繋がっていたりします。うまい。
兄弟だからってお兄ちゃんと比較しないでほしい。
出た! 自分の欲しいものはちゃっかり愛嬌で手に入れる下の子! かわいいけどね!
ところで、ギリシャ神話をおさらいしててそういえば、となったのですが、タナトスって本来あんまり神話がないんですよね。あってもポンコツエピソードだったり。だからメジャーな神話ベースだと、タナトスって正直人気ない。逆玉の輿エピソードがあるヒュプノスの方が扱いがいいかもしれません。まあ死の神だし敬遠されるんだろうね。
現代におけるタナトスのかっこいいイメージは、中世ヨーロッパのいわゆる「大鎌を持った命を刈り取る死神」のイメージや、フロイトの言う「タナトス(死の本能)」に負うものなのかも。
なので、『HADES』のタナトス・ヒュプノス兄弟のいわゆる「上の子と下の子」的な描き方って、あえてほぼオリジナルで一からやってるんですね。グッジョブ、私が助かる。多分ニュクスお母さんは「ケルベロス(犬)、ヒュプノス(弟)にエサやっといて」って最低1回は言ったことあると思う。少なくとも我が家はある。
恋愛展開の描写とステップが細かい
キャラとの交流では「ここから恋愛展開に入りますよ」というアイコンが出ます。何たるド親切!! 雑LOVEを浴びて倒れてきた身の五臓六腑に深く沁み渡る。やっぱ恋愛まわりに関しては、私は洋ゲーを選んだ方が安全かなあ…。
ロマンスキャラは異性/同性/別種族(魔物)と各種取り揃えておりますが、それよりとにかく私はこの細かいお知らせが嬉しかったです。
というか、股がけいけるのか!? 古代ギリシャだからいけるのでは!? と悩んでいたら俺の師匠アキレウスからフォローが。要約すると「神だからOK」とのことです。なるほどね。ウルトラC級の説明ではありますが、あちこちの女に手を出す好色なゼウスや、夫がいながら公然と愛人てんこ盛りなアフロディテなど、複数の相手がいる神って多いもんね。俺も無名とはいえ神! ヨッシャ! なお「まあ親父さんは奥さん一筋だったけどね」という注釈つき。複数も一筋もプレイヤー次第ってことですね。ウス。
同性のロマンスキャラの存在も、もちろん今の潮流として多様性を考慮した結果だとは思うのですが、まあそもそも古代ギリシャだしな! という強すぎる納得があります。
※古代ギリシャの同性愛は男尊女卑がベースにあるので、現代の同性愛とイコールじゃないけどね
個人的に良かったのが、股がけする時の展開。ロマンスキャラ同士、最初から普通にそのことを知っています。しかも、後々正式に「両方と付き合う?」という展開になる。ちゃんと同意のある複数恋愛! ポリアモリーだ! しかも相手同士は連絡が密だから俺のことが筒抜け。悪いことできないじゃん。やめて。
なお、ゴルゴンのデューサも恋愛対象なのですが、恋人にはしませんでした。可愛いけど恋人というより妹みたいだなと思ったのと、何より私のちょう好みの女・メガイラちゃんの女子会友達なので手が出せませんでした。
デューサを振る場合、プレイヤーとしては恋人にしない選択をしてるのですが、会話の流れとしては、好意を寄せるザグレウスがデューサにごめんなさいされるという、実にうまい展開です。
私が無個性(無口)主人公がそろそろ限界だと思う理由もここにあったりする。無口だからどんなプレイヤーにも合うかと思いきや、作り手が用意した選択肢や行動によっては、むしろ無口主人公の「個性」が出てしまうんですね(例:恋愛対象が異性しかいない、恋愛しない選択肢がない、など)。
ある程度予算のありそうなゲームでは、キャラメイクや複数の選択肢という形でそこを解決しています。固定主人公である場合、むしろ主人公にちゃんと個性がある方が、下手に自分と同一視せずに感情移入して楽しめるのでいいですね。
後編に続く
