かたくりかたこりかたつむり

やっぱり誤字脱字は氷山の一角

アニメ『ペルソナ4』 最終回を迎えての感想

関東では最終回を迎えたアニメ『ペルソナ4』。その総評をまとめました。ネタバレあり。最初に断っておきますが辛口ですよ。

まず全体的な感想としては、「悪くはないけど、熱く語れと言われたらできない」。ペルソナ4が好きでなければ見ていなかったし、はまることもなかったろうなと思います。ストーリー展開、人物描写、演出、作画等々、子供向けアニメという印象でした。

いくつかの点に分けて、ちょっとつらつら書いてみようと思います。

●監督の人選、制作の狙い

プロデューサーの足立さんがそもそもペルソナシリーズのファンなわけですが、監督にペルソナ4のファンである岸監督を選んでいます。そういうわけで、スタッフが原作が好きなこと、それを再現しようとしていることは良く伝わって来ました。「分かってる」ネタをちょいちょい入れてくるあたり、それは本当だと思います。原作再現こそファンに求められているという理解もあったでしょうし、原作ものはそこがキモでもあるわけです。その部分は成功したと思います。

●販促体制

販促(販売促進)はこれでもか! というくらい万全でした。ティザーサイト、ツイッターでの広報、ツイッター連動企画、マヨナカ生テレビ、マヨナカ影ラジオ、その他もろもろのイベント。さらにパッケージ特典には目黒氏作曲のBGM、カバーは副島氏描き下ろし。ファンであれば盛り上がること必至です。このカバー具合は素晴らしいと思いました。作品の評価はそれ単体の良さだけではなく、こうした広報体制にも大いに左右されますから。

●良かった点

全体的に見て、構成がとてもよかったと思います。普通にプレイすれば80時間ほどに及ぶゲーム内容がうまくまとめられています。例えば、あいと一条のコミュを同時進行で見せたり、ミスコンの結果からりせコミュに繋げたりなど。夏休みのコミュ一気消化も描写不足はさすがに否めませんが、2話構成にすることで飽きない作りになっています。

またアニメ独自の展開も面白かったです。4話の雪子のオリジナルストーリーは、ゲームではできない掘り下げ方が見所でした。美津雄のエピソードもきちんと描かれることで、その後の行動への説得力があります。

後は、これは原作からですが、声優陣が上手い人揃いなだけあって聞き応えがありました。

●ゲームをアニメ化するということ

私が微妙だと思った点は、ゲームであるペルソナ4からシナリオだけを抜き出してしまったことです。そもそも原作のペルソナ4のシナリオは結構お粗末な出来で、100点満点なら70点くらいだなあと思っていました。しかしこれはゲームなので、戦闘やクエストなどのゲームならではの楽しさ、システムの面白さというものがあります。また私にはキャラクターや、田舎の学生生活のゆる~い雰囲気も魅力でした。

しかしアニメでは視聴者はプレイヤーではなく、あくまで傍観者の立ち位置にいます。アニメというのはゲームのように能動的に楽しむことは出来ないし、主人公の悠も感情移入型のキャラクターではありません。その結果、ゲーム要素でごまかされていたお粗末なシナリオが明らかになってしまいました。そしてアニメはそれを大きく変えたりはせずに再現しました。

私はP4Aを見ることでペルソナ4本編の評価が少し下がったという、おそらく珍しい人です。ゲームのアニメ化としてではなく、アニメ作品単体として良いものを求めていて、それが制作側の狙いや大多数のファンとは違っていたのだと思います。そういうわけでカットインはいらないし、ゲーム本編で流れるタイミングであってもアニメ自体に合わないBGMはいりません。正直、合わないBGMでも釣られている人を見ると「ちょろいな」と感じてしまいます。

●作画のことは言ってくれるな

何というか、残念の一言。一般的に作画が悪いことの何がいけないかというと、「話に集中できない」というのが大きな理由ですが、P4Aに関しては「全然スタイリッシュじゃない」というのも大きいです。崩れた顔でスタイリッシュ気取られても(^ω^) しかしそれだけではなく、動きや構図もあまりよくないために、特に戦闘シーンの迫力に欠けていました。「菜々子だけは崩さない」という意思も感じましたが(笑)

●人物描写

私にとっての魅力のひとつであるキャラクターは、性格が誇張される傾向にありました。ウザいだけの陽介、暴力女の千枝、天然というよりただ失礼な雪子……。人物描写に関しては誇張しかできないのだなと感じました。

最終話で陽介が悠を助けますが、悠って陽介にとって(あるいはその逆も)そんなに大きな存在でしたっけ? 確かに直前のコミュでコミュMAXイベントはやりましたが、いきなりやられただけではあまり説得力がありませんでした。また陽介が小西先輩のことを引きずっている描写もあまりなかったので、急に怒りの表現をされても見ている側はついていけません。

ゲームでははっきりした個性のない主人公ですが、今回鳴上悠という新しい主人公像を作ったことに関しては別に構わないし、かなり気を遣う作業だったと思います。万人共通のP4主人公というのは存在しないわけですから。そして悠が感情をあらわにするシーンもアニメならではでした。ただ普段の天然っぽい悠と同じキャラクターだと感じることができず、別人のようでした。

悠はアイキャッチのステータス画面では順調に成長しているのですが、そもそも初期ステータスがあまりに低く、描写として極端すぎます。しかも成長している過程はアニメ的には描かれません。ゲーム的には折り鶴や読書などで成長しますが、アニメとしてはそれはどうなんだろうなあ……と思ってしまいます。ただ、「鶴折ってる!」「読書してる!」と気付いて喜ぶ人はいるでしょうね。

●日常回と戦闘回

岸監督はギャグに定評のある方らしく、日常回は安定しています。しかし戦闘となると表現力の低さが目立ちます。迫力がなく仲間は棒立ち、影との葛藤もギャグのせいで中途半端になってしまうきらいがあります。また戦闘はほぼパターン化していて、「仲間や主人公の新ペルソナのお披露目→1~2人に戦闘メンバーを減らすためのトラップやギャグ→勝利」という筋道を辿ります。これが読めるとなかなかに興ざめです。もっとも、原作も影が出るまでの流れはかなりマンネリだったし、「お約束」というやつでしょうか。

日常回でもコミュになると台詞で全てキャラクターが説明してしまい、アニメとして画で見せる意味はあるのか? と思ったりもしました。このあたりは好みで多少分かれるかと。

●その他

アニメオリジナルキャラクターのあいかのごり押しが酷かったです。便利なモブとして使われるならいいんですが、本筋をねじ曲げてまで出すべき必然性は結局ありませんでした。あれほど「原作に忠実」を謳っていたのに……まあ大人の事情ですかね。

それから真エンドがパッケージ特典なのはうまい落とし所だと思いました。一応ノーマルエンドでも綺麗に終わるし、6月にはリメイクのP4Gが控えているのであえて出す必要もないのではないでしょうか。アニメBD/DVDの10巻が8月に発売なので、頑張ればその前にクリアできるでしょうし、最終巻に行くほど売り上げは落ちるでしょうし。

●最後に

「ゲームのアニメ化としては成功、しかしアニメ単体としては平凡」でしょうか。色々言いましたが、とりあえずゲームをプレイして下さい。


●4/4追記

やはり尺が足りない……。

悠の成長がゲーム的に描かれるのは、ファンサービスもあるでしょうが「そこに割く時間がなかった」のかも知れません。

また、キャラクターがすべて台詞で説明してしまうのも、同じく時間短縮のためかも知れません。

これは多少原作の表現方法も関係があります。原作では、キャラの台詞、表情のみ変化する立ち絵、固定視点からのデフォルメされた3Dモデルで物語を表現しています。ここでは台詞の果たす役割が大変大きいため、自然と台詞で全て説明する傾向になります(「台詞と伝奇ものとバストアップイベント/アニメ版ペルソナ4」に詳しいです)。それをそのままアニメにしてしまうと「画、いらなくない?」になってしまうのでは。

しかし原作通りと喜ぶ人が「作画も原作通りにしろ」と言わないのは不思議でした。あ、そこはいいんだ(^o^)

それからこれも興味深かったエントリです。→ペルソナ4#19「It's School Festival Day! Time to Have Fun!」

「エピソードを再現しつつ、美味しくオリジナルの追加を入れ込むことにより、原作ファンの満足度はとても高い。」

「アニメーション作品単体としては、この「ペルソナ4 Persona4 the ANIMATION」は、決して評価の高くなるものとは思えません。」

「しかし、別媒体からの移植作品としては、少々大げさですが、歴史的傑作レベルと呼んでも良いのではないかと思っています。原作ファンを満足させ、原作を知らぬ者に興味を抱かせる。その基本すら出来ていない作品の、何と多いことか。」

「まあ、前提からして違うんじゃないかなーと思ったわけで。」

「いろいろとリソースの限られた深夜アニメにおいて、どのように視聴者を想定し、どのように優先順位をつけたか、の一例としては、とても面白いケースなんじゃないかな。」

はい、ごもっともです/(^o^)\すいません。

私は「想定された視聴者」から外れたんです。原作ファンだけど。


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