かたくりかたこりかたつむり

やっぱり誤字脱字は氷山の一角

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』感想・レビュー 楽しさが言葉にならなくて「イェーイ」が限界

はじめに(あるいは言語化不可能の言い訳)

楽しくプレイしてます、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(以下BotW)』。おかげさまでハイラル寝不足です。ゲームにビタミンCサプリとか同梱しといて欲しい。

で、レビューを書こうと思ったんですが、これができない。理由は割と簡単な話で、このゲームの楽しい部分が、言語化しづらい「体験」だからです。

例えるなら、虫取りの楽しさを言葉で説明しづらいのと一緒。もちろん、「どこが楽しいのか」という分析や、虫に関するうんちくの披露なんかは可能でしょう。でも、虫取りに熱中している時のワクワク感はなかなか言葉にならない。言語化するとしても、私にはせいぜい「イェーイ」が精一杯です。小学生か。

そして、言葉にしてみたところで、その面白さの10分の1も伝わるかどうか怪しい。でも今のうちに何か書いておきたいので、イェーイ以上のものをちょっと考えてみようと思います。

探検は楽しいに決まってるじゃんか

『BotW』はストーリーが薄めでフィールド探索のウェイトが多め、探索の口実としてストーリーがくっついているタイプのオープンワールド型ゲーム。広大なハイラルの大地を踏破していくのが、このゲームのメインかつ醍醐味です。あちこち寄り道をしている間に、ゼルダ姫を助けるという大目的は早くもどうでも良くなってきます。ごめん姫、あともう少しキノコを採ったら行くから、あっチョウチョ!

正直、序盤は移動するだけでも結構苦労します。崖を登りきれずに下まで落っこちたり、泳いでいる途中で力尽きて溺れたり。かと思えば、うっかり魔物に囲まれてゲームオーバー。移動に関して言えば、終盤でようやく快適になるレベルです。

でも、苦労して移動しつつ段々快適になるのがたまらない。そうすると、序盤では行けなかった場所にも行けるようになって、新しい発見があるのもまた楽しい。

一応、メインクエストの目的地はあるので迷うことはありませんが、キノコやリンゴを取りつつ進んでいったら、いつの間にか全然違うところに出ていたり……。

フィールドはかなり広く、自由度も高いですが、塔や祠などのランドマークを目安に進んでいけばいいので分かりやすい。塔を開放するとエリアごとのマップが解禁される仕組みも、敷居が低いです。

試練の祠のパズルは解き方がいくつもあって自由度が高く(というか『解ければそれが正解』が近い)、仕掛け自体がアクションの練習&ヒントになっている点も巧いです。

こういった一連の探索や謎解きを、楽しくプレイさせる工夫がとにかくすごいの一言です。

デフォルメながらもリアルな表現

ハードのスペックのせいもあるのか、グラフィックはものすごく精巧とは言い難いです(もっとも、任天堂ハードのゲームにフォトリアルな表現を求める人はいないと思いますが)。ただ、光を意識した彩色のためにこれが結構リアルで、大自然と各地に佇む集落や廃墟といった要素をより美しく見せています。

金属や水面などの反射が多いものはリアルに見せやすい

遠くのものほど薄く青みがかって霞む「空気遠近法」は基本

超がつく有名どころでは、レオナルド・ダ・ヴィンチモナ・リザ》の背景にも空気遠近法が使われています

出典:http://www.grossart.jp/page002o.html

人間の目は、物体に反射した光を捉えて物を見ている。そのため、物の特性ごとに異なる反射率や屈折率、特定の波長の色を正しく描写すると、細部が少し荒くても結構リアルに見える。

クロード・モネ《散歩、日傘をさす女性》

キャラデザもデフォルメされたものですが、この動きが結構細かい。遠隔で爆破できるリモコンバクダンは、投げると地形にかなり影響を受けた動きをするし、夜になると寝てしまう敵もいるので、その隙を狙って攻撃したり(最低)。

足元の草むらなんかも見た目は全くリアルじゃないんですが、ここに風と効果音が加わることでリアルに見えます。正確に言うと「プレイヤーの記憶の中の、そよぐ草原を思い出させている」に近い。

ゲームの視覚表現がリアルに近づいたことで、ある種かえって制限がかかってしまい、つまらなくなる面がどうしても出てきてしまいます。「ドット絵の方がよかった」と感じる人が多いように、人間の想像力はリアルな描写を超えるところがあるからです。その中で「プレイヤーの記憶や想像力を使ってリアルに見せる」というのは、ひとつの解なんじゃないでしょうか。

※もっとも、リアル以上にリアルと思えるようなフォトリアル表現にも、きちんと価値があると思っています。

結構デフォルメされているのに、ある種のリアルさを湛えたグラフィックと動き。これらが、ゲーム内世界への没入感に一役買っているのは間違いないです。自由度が高くも敷居の低いオープンワールドの仕様といい、このあたりはかなり丁寧に作られていると思います。

残念な要素

『BotW』はよくできたゲームですが、それでも惜しいと思うところはあるわけです。また、こういう点は文章にしやすいため少し長くなりますが、基本的には気に入っているゲームだという点を念頭に置いておいてもらえれば。

操作やキー割り当てが独特かつやや煩雑

基本操作

まず、ジャンプのキーがXボタンという時点で、ものすごく戸惑いました。Bじゃないんだ!?

 X ←ここがジャンプ Y  A  B ←大体のゲームはここがジャンプ

一応、XボタンとBボタンを入れ替える設定もありますが、そうすると今度はキャンセルの動作にXボタンが割り当てられてしまい、それはそれで不可解だったり……。アクションゲームは平行してプレイするとキー割り当てが違って混乱しがちですが、混乱度合いでは個人的に一番かもしれません。ちなみにキーコンフィグをいじれる箇所も少ない。

戦闘

ガードとロックオンの両方がZLボタンに割り当てられていますが、発動の切り替えが敵との距離次第で、任意で発動できない。しかも、両手を使う武器(大剣・槍・弓)を構えている間は盾でガードできないという無闇に細かい仕様で(なんとTIPSに出てこない!)、敵との距離によってはZLボタンでロックオンだけは発動するのでややこしいです。

また、回避・ガードの判定タイミングにクセあり。普通、アクションゲームの回避・ガードのジャストタイミングは「敵の攻撃の予備動作を見たら構えて、攻撃が当たる寸前でボタンを押す」だと思いますが、『BotW』では「予備動作の直後にボタンを押すと回避・ガード』です(※正確には『敵の攻撃範囲から出る』のが回避判定っぽい)。

ちなみにこちらは『ゼルダ無双 厄災の黙示録』の回避成功時。

つまり、普通のタイミングでボタンを押すと間に合わず、ダメージを食らってしまいます。これは慣れるのに少し時間が掛かりました。というか、未だに回避ジャストの発動タイミングに「何で!?」と思いつつ適当に発動させています……。判定範囲も結構ガバガバで、普通その距離で発動せんだろ、という間合いで回避ジャストからのラッシュが発動します。アクション慣れしている人ほど混乱しそうで、この辺は難易度とデフォルメキャラデザの合わせ技でそうなっているのかもしれません。

ボス戦は体格差が圧倒的なため、ビームや攻撃を盾で弾く、遠くから弓で攻撃するなど、対策が割と似通ってしまうのがやや残念。ただ、『BotW』は戦闘がメインというわけでもないので、このくらいがいいと言えばいいのかも。

それと、途中で観念して購入しましたが、Proコン必携です。これはまあ、Switchでアクションゲームをするならどのタイトルでもそうだと思います。『BotW』ではジャイロ機能が必須なので、純正のProコンが無難、というか一択です。

料理・神獣操作

体力回復や、戦闘に有利な特殊効果を得るために必須の料理作業……ですが、頻繁に行うにもかかわらず、操作がちょっと独特で複雑。

  1. メニュー画面からXボタンで材料を持つ(素材が複数の場合)
  2. Bボタンでメニュー画面を閉じ、素材を持っている状態になる
  3. 鍋に入れて料理

この時、「あ、やっぱ料理はいいや」とか思ってメニュー画面を閉じても、素材は持ったまま。正解は「メニュー画面でXボタンを押して持つのをやめる」です。なんか納得いかん。この「納得いかん」は神獣操作で顕著になります。

神獣というでかいメカみたいなものをマップ画面から動作させられるんですが、どう動かすかを入力した後に決定するボタンがなんとBボタン。「あ、やっぱ神獣操作はいいや」と思ってBボタンを押すと、神獣がガガーと動いちゃいます。

どうも『BotW』ではBボタンが「メニュー画面を閉じる」機能と「いいえ/キャンセル的な意味」機能で多少混乱している節があります。

キャラ描写が時々古め

基本的にストーリーは薄めなのでウェイトは低めですが、デフォルメされているとはいえ男女の描き方がややテンプレに感じるところがあります。

ハイラル王国の姫・ゼルダは、王家の姫として期待される役割を果たせずに苦悩しているキャラクターです。そして、近衛の家系に生まれ、史上最年少で剣士と認められたリンクに対し、分かりやすく劣等感を抱いています。物語の舞台は基本「ヨーロッパのどこかの王国だったっぽい感じ」であり、ゼルダも「主人公の助けを待つお姫様」という古典的な立ち位置ではあります。かつ、今の平和な状態を保っている重要な存在だったりと、この辺は身分制や出自に期待される役割などへのカウンターも感じられて、今の時代のお話っぽい感じがします(他のゼルダシリーズ作品をプレイしていないので、定番だったらすみません)。

ただ、何にせよ世界としては身分制なので、そこから逃げ出すのではなく、身分に期待される役割に見合うよう必死に努力する、という方向ですが。

※実のところ、天才剣士クンのリンクも、周囲の目がなければ「やりマッスル!」「やめマッスル…」とかノリノリで言うキャラであり、その辺が早く分かっていたら国も滅びなかったのに……とか言ってはいけない

ゼルダはギリギリのところで力に覚醒し、リンクがラスボスを倒した後も、真エンディングでさっぱりとした強さを見せてくれます。正直、『BotW』のゼルダはキャラデザ含めて二次元キャラとしてはあまり映えないと思うんですが、人物としては結構好きです。

パワー系女性ではなく、あくまで姫っぽい強さなのもいい。個人的にウルボザみたいなパワー系女性は大好きですが、「強い女性=パワー系だけ」ではないので。

が、ゲルド族やゴロン族などの描写を見ると、従来のテンプレが溢れかえっているので若干片手落ち感があります。

特に女性のみで暮らしているゲルド族は、デートのノウハウや男性へのアプローチ方法などが典型的な要素に溢れていて、若干お腹いっぱい。男の胃袋を掴んだりはアリなんですけど、別に「それだけ」じゃなくてもいいと思うんですよ。

あと、設定を詳しく知らないのですが、ゴロン族って男だけなんですかね……?

メインキャラクターでは今っぽい描写もありながら、街のあちこちではやや古さを感じる要素が多く、その辺がちょっと残念。『BotW』はストーリー主導型のゲームではないので、この辺の残念な要素がそこまで目立たなかったのが個人的にセーフでした。

DLCはまあまあ

『BotW』にはDLCが2本あります。サブクエストが大方埋まってきたところだったので、ゲームの延命という意味では悪くない内容です。ご褒美ムービーは短いですが、英傑たちの知らないエピソードが見られていい感じ。

ただ、祠や剣の試練は、ノーセーブ仕様や一撃でやられる縛りなど、ストレスがたまる点が多く、爽快感がないのがちょっとつらいところ。他にも、目新しさが少なくボスも再戦な点がちょっと残念です。

おわりに

なんせ楽しさの言語化が難しいもので、残念な要素の文量が多くなってしまうのですが、面白いかと聞かれたら断然面白い。Switch持ってるならやるべき。でも、やらないと分からない類の面白さです。

ストーリーの存在が薄めなのも個人的によかったです。最近、ストーリーがダメで最終的に苦手意識を持ってしまうゲームが増えたので。これが私自身の変化なのか、我慢の閾値を超えてしまったからなのかは分かりませんが、年を取ると多分苦手なものが増えるんですね。というほど年取ってはいないので、50年後くらいに再検討したいところ。

考えてみれば、私のビデオゲームの原体験は初代ポケモンなわけで、あれもストーリーはおまけ程度、虫取りなどと同じ体験をゲームに落とし込んだものでした(最近のポケモンはストーリーもがっつりあるらしいですが)。そりゃまあ楽しいわな。

緑派だった

というわけで、ちょいちょい難アリな部分もありつつ、それを上回る面白さが詰め込まれたゲームでした。